バスルームと洗面所の写真を何枚か撮り、気づいたことをひと通りメモした美怜は、よしと頷いてドアを出る。

ベッドルームに戻ると、成瀬はソファに座ってパソコンを開いていた。

あれ?と美怜はキョロキョロする。

「本部長、富樫さんはどこに?」
「ああ。営業課長に電話で呼び出されてね。接待に向かったよ」
「そうなんですか」
「やっぱり営業はいつの時代も大変だな。まあ、富樫なら上手くやっていけるだろうけど。人当たりがいいし、裏表がないから、誰からも好かれるだろうな」
「はい。彼は根っからのいい人です。優しくていつも思いやりに溢れていて。私も何度も彼に助けられました」
「そうか」

それでもつき合わないのはなぜだ?と、成瀬は美怜の顔をじっと見つめる。

(富樫はああ言っていたが、もしや彼女の方は富樫のことを想っているとか?それとも、口では否定していた富樫も、彼女のことを好きだったりするかも?)

最近の若い子は軽いノリでつき合うのかと思いきや、そんなふうに純粋に心に秘める子もいるかもしれない。

もしかして、互いに両想いなのに言い出せないとか?

(だとしたらもったいない。俺に何かしてやれることはないだろうか)

そんなことを考えながら見つめたままでいると、だんだん美怜が顔をこわばらせるのに気づいた。

「あ、あの、本部長。わたくし、何か失礼な振る舞いを…?」
「え?ああ、違う。すまない、考え事をしていて」
「そうでしたか。ですが、あの、もし何かお気に触ることがありましたら、すぐにおっしゃってください」

小さくそう言って、美怜は身を縮こまらせる。

成瀬はため息をつくと、顔を上げて正面から美怜を見た。