「じゃあ、実際の部屋を見に行くか」
「はい」

三人で食事を済ませると、成瀬が押さえておいた高層階のダブルベッドの部屋へ行くことにした。

フロントで手続きを済ませてから、エレベーターで二十二階まで上がる。

ドアを開けると、正面に広がる夜景が目に飛び込んできた。

「わあ、素敵!」

美怜は思わず呟いて、早速窓の近くへ行く。

すぐ脇には二人掛けのソファが置いてあった。

「このソファに座ると、せっかくの夜景が見えにくくなりますね」
「そうだな。やはりカウンターチェアの方がいいだろう」
「はい」

成瀬に頷いてから、美怜はカバンからメジャーを取り出して寸法を測り始める。

「うーん、この部屋の広さから見て、うちの製品では一番コンパクトなカウンターにした方が良さそうですね」
「確かに。ソファを置かなければ長いカウンターでもいいが、やはりソファもあった方がいいだろうな」

すると卓も、うんうんと頷く。

「カップルですからね。やっぱりソファに並んで座りたいですよ」
「そうだな」

淡々と話す成瀬と卓だったが、美怜はまたもや何かのスイッチが入ったように胸がドキドキし始める。

「ベッドもキングサイズがいいけど、うちのキングは大きさが三段階ありますよね。幅が百八十と百九十と二百。どれがいいかな?」
「二百だと圧迫感があるな。部屋が狭く感じる」
「そうですね。この部屋の広さなら、百九十がいいかな?美怜、ちょっとメジャー貸して」
「ははははい!どうぞ」

ん?と訝しげに卓と成瀬は振り返る。

「どうかしたか?美怜」
「い、いえ!なんでもありません。メジャーをどうぞ」
「サンキュー」

受け取った卓は、置いてあるダブルベッドにメジャーを当てる。

「うちの百九十のキングだと、この辺りまで来ますね」
「うん、やっぱり二百は無理だな」
「ええ。今このダブルは百四十だから、百九十でもかなり広くなりますね。ちょっと寝てみよ」

そう言って卓は靴を脱ぎ、ベッドにごろんと横になる。

「成瀬さん、ちょっと隣に寝てみてください」
「いいけど。襲うなよ?」
「襲いませんよ!」

警戒しながら成瀬は少し卓から離れて寝転んだ。

「やっぱり近いな。身の危険を感じる」
「成瀬さん!どういう意味ですか?」
「うわ!だからこっちに寄って来るなってば」
「カップルが並んで寝た時の感覚を確かめてるだけですよ」
「カップル言うな!」

並んで横たわったまま小競り合いをする成瀬と卓に、美怜は完全に妄想スイッチが入り顔を赤くする。

(もうだめ。ラブラブなシーンが浮かんできちゃう)

くるりと二人に背を向けると、その場を取り繕うように声をかけた。

「あの、私、バスルーム見て来ますね」

美怜はそのままそそくさと立ち去った。