「予約した成瀬です」
「お待ちしておりました、成瀬様。どうぞこちへ」

ルミエール ホテルのアネックス館のレストランは、天井が高く明るい雰囲気のイタリアンレストランだった。

本館は値段もそれなりのフレンチレストランや和食の料亭、最上階のバーなどがあるが、アネックス館はカジュアルで入りやすいレストランが揃っている。

平日とあって宿泊客も多くないのか、三人は窓際の景色が綺麗に望めるテーブルに案内された。

ノンアルコールで乾杯して、パスタやピザなどをシェアする。

「このレストランの家具も、割と低価格なメーカーのものですよね」

料理を味わいながらも、美怜はくまなく家具や内装をチェックする。

「そうだな。何せ小さなお子様連れが多い。椅子やテーブルもあっという間に汚れたり傷がついたりするだろうから、気軽に買い換えられるよう価格帯も抑えてあるんだろう」

成瀬の言葉に、卓が少し考えてから提案した。

「本部長。先方のお話では、アネックス館の全館リニューアルに伴う家具やインテリアのプロデュースを、ということでしたよね。それにはレストランの内装は含まれませんか?」
「現段階では、その話は出なかった。あくまで客室と、ロビーやエレベーターホールの装飾ということで、レストランについては何も触れられていない」
「なるほど。ではもしも話題に上がった時にすぐにお答えできるよう、レストランの内装や家具についてのご提案も準備しておいて構いませんか?」
「ああ。だが無駄な労力に終わる可能性もあるぞ?」
「もちろん構いません。想定できること全てに対応できるよう、抜かりなく準備しておくのが私のやり方ですので」

卓がきっぱり告げると、成瀬はふっと笑みをこぼした。

「道理で成績がいい訳だな、富樫」
「本部長には遠く及びませんよ」
「いや、すぐに追い抜かれるよ」
「ご冗談を。レジェンドの記録を塗り替える人なんて、この先現れませんよ」
「では、俺の記録を抜いた暁には一杯おごってくれ」
「そんな時がもし来たら、ドンペリでもなんでもおごらせていただきます」
「言ったな。楽しみにしている」

信頼し合った男同士の会話を聞きながら、美怜はなんだかうらやましくなる。

(かっこいいな。本部長も卓も)

この二人と一緒に大きな仕事を成功させたい。

改めて美怜はその想いを強くしていた。