「うーん…。テレビで細部まで映ることを考えたら、やっぱりデザイン性のあるものがいいんじゃない?」

打ち合わせから帰ってくると、卓と美怜はミュージアムの閉館を待って、チームメンバーも交えた話し合いをする。

「アンティークシリーズか、あとはロイヤルシリーズとか?」
「そうですね。うちの製品ではトップクラスのお値段ですけど、コンベンションセンターとはサブスクリプション契約を結んでいて、このランクの家具も使用可能なので」
「それなら遠慮せず、イチ押しのものを揃えようよ。家庭向きではなくて、ホテルライクなものとか」
「いいねー。ちょっと現物見に行こうよ」

そして皆で上層階の倉庫に向かった。

「この辺りの最高ランクのもの、片っ端から見ていこうよ。卓くん、ちょっと会場の写真見せて」
「はい、こちらです」

先輩達は卓が持っているタブレットに顔を寄せる。

「うわ、想像以上に広いね」
「はい。メイン会場のここは、無柱構造で二万平方メートルあるフリースペースです」
「そんなに?これだとさ、ウォークスルー形式で見て回る、なんとか展みたいなのが主流なんじゃない?」
「ああ。恐竜展とか、お城のエキスポ、あとは鉄道博覧会みたいな?」
「何それ?佳代、詳しいね」
「まあね。でもそういうのでも、ステージを設置して椅子を並べたコーナーもあるよ。事務所にあるような、簡易的な椅子だったけど」

それよ!と、美沙が声を上げる。

「せっかく趣味の世界にどっぷり浸りたいのに、そういうところで現実に引き戻されちゃうのよ。写真映えもしないしさ。椅子や壁の装飾にもこだわって、世界観や雰囲気も大事にしたいよね」

うんうんと皆で頷く。

「じゃあテーマとカラーを決めて、いくつかレイアウトしていこうか」

その後もワイワイと盛り上がり、結局また課長が「はい、そこまで。帰りなさーい」と呼びに来るまで白熱していた。