「富樫さん、結城さん。本日はありがとうございました。予想以上に主催者の皆さんにも喜んでもらえて、我々も助かりました」

コンベンションセンターの職員に声をかけられ、卓と美怜も頭を下げる。

「こちらこそ。色々とご配慮いただきありがとうございました。お世話になりました。当日もよろしくお願いいたします」
「はい。それで実は…。お二人に急遽お願いしたいことがございまして」

気まずそうに話し出した職員に、卓は美怜と顔を見合わせてから、先を促す。

「どういったことでしょうか?我々にできることなら、お手伝いさせていただきます」
「そう言ってもらえるとありがたい。実は、マスコミを呼んでこの新しいコンベンションセンターをお披露目するオープニングセレモニーをすることが決まりまして。最初は館長の挨拶とテープカットだけの予定だったのですが、せっかくマスコミを呼ぶんだから、会場内を自由に撮影して放送してもらおうということになったんです。そうすると、ガランとした空っぽの会場ではなく、こんな使い方もできるとアピールできるよう、セッティングした方がいいとなりまして」

なるほど、と卓と美怜は頷いた。

「つまり、いくつかのエリアごとに、テーマに合わせた様々なテーブルセッティングを行う、ということでしょう?」
「ええ、そうです。会議仕様や展覧会仕様などの、会場を大きく捉えた宣材映像は既に用意してあるのですが、実際の家具や備品、装飾なども詳しく紹介したくて」
「かしこまりました。このコンベンションセンターを利用すれば、テーブルや椅子、装飾なども、幅広くこだわることができると伝えられるよう、色々なパターンをご提供いたします」

卓の言葉に、職員達はホッとしたような笑顔になる。

「ありがとうございます!いやー、頼もしい。あなた方にお願いして本当に良かった」
「こちらこそ、大変光栄です。では早速いくつかのパターンをシミュレーションして、ご提示いたしますね」
「はい。楽しみにしております」

こうして卓と美怜は、お花のイベントと並行してオープニングセレモニーの準備も進めることになった。