「美怜、大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫」

程良い気だるさを感じながらべッドに並んで横になり、成瀬は愛おしそうに何度も美怜の髪をなでる。

美怜はあどけない少女のように、はにかんだ笑みを浮かべた。

「とっても幸せだった。ありがとう、隼斗さん」
「俺の方こそ。ありがとう、美怜。ずっとずっと大切にするから」
「うん」

美怜の笑顔に微笑むと、成瀬は身体を起してベッドを下りる。

バスローブを羽織ると、美怜の分も手にして戻って来た。

「身体、辛くないか?」
「大丈夫」

労わりながら美怜の身体を支えて起こすと、バスローブを羽織らせた。

「今、お水持って来るから」
「ありがとう」

美怜はバスローブに腕を通し、前身頃を整えてきちんと結ぶ。

ベッドに並んで腰掛け、水を飲んで落ち着くと、成瀬は再び立ち上がった。

「美怜」
「はい」

戻って来た成瀬は美怜の前にひざまずく。

「改めて君にプロポーズする。美怜、俺にとって君はかけがえのない存在だ。最初は、バラのチャームを大切にしてくれる君がただ可愛くて、守ってやりたいと思った。だけど今は、君の強さ、美しさ、優しさ、全てに心惹かれている。守りたいと思っていたのに、逆に俺は君に支えられ、君に幸せにしてもらっている。ありがとう、美怜。この先もずっと君に感謝し、君を守り、君を必ず幸せにしてみせる。美怜、俺と結婚して欲しい」
「隼斗さん…」

美怜の瞳から綺麗な涙がこぼれ落ちた。

「私もあなたが大好きです。年齢の差も立場の差もあるのに、いつも私に真っ直ぐに向き合ってくれて、優しく手を差し伸べてくれて。素敵なバラのチャームをプレゼントしてくれた時は、本当に嬉しかったです。失くしてしまった時には、一生懸命探して見つけてくれて。その上、ずっと私のそばにいると言ってくれました。どれ程心強く嬉しかったか。それでも一歩踏み出せなかった私の気持ちにも寄り添ってくれて。あなたのおかげで私は幸せになれました。もうあなたのいない人生なんて考えられません。これからも、どうか私のそばにいてください。隼斗さん、私もあなたと結婚したいです」

成瀬は、優しく微笑んで頷く。

「ああ。結婚しよう、美怜」
「はい」

そして成瀬は美怜に、リボンを掛けた四角いボックスを差し出した。

「美怜、開けてみて」

はい、と受け取ると、何だろう?というように小首を傾げながら、美怜はリボンを解く。

そっとふたを開けた瞬間、美怜は思わず息を呑んだ。

目に飛び込んできたのは、真っ赤なバラと輝くダイヤモンドの指輪。

「…なんて素敵なの」

思わず呟いて目を見張る。

「美怜、この指輪には二つのバラがついている。一つは俺でもう一つは美怜。ずっとこの指輪を着けてくれる?」
「はい。ずっとずっと、大切に着けます」
「ありがとう」

成瀬は指輪を手に取ると、美怜の左手に手を添えて、薬指にそっとはめる。

「わあ、綺麗!」
「よく似合うよ、美怜。このバラなら落っことさないだろ?」
「うん!ありがとう、隼斗さん」

ダイヤモンドにも負けない美怜の輝くような笑顔に、成瀬はふっと目を細めて抱き寄せる。

「お誕生日おめでとう、美怜」
「ありがとう!隼斗さん、大好き」

二人は微笑んで見つめ合うと、どちらからともなく顔を寄せ、長くて甘いキスを交わした。