「なるほど。お花がたくさん並ぶイベントですね。それなら全体的に明るい空間にしましょう。装飾は、お花の邪魔をしないように控えめに。どの場所にどんなお花が並ぶのかは、事前に把握したいですね。それによってテーブルクロスの色なども変わってきますから」

コーディネーターの言葉に卓は頷く。

「分かりました、先方に確認します。各エリアごとに使用するテーブルや椅子の数は図に記載してありますが、予備も用意します。配置も当日急な変更があるかもしれません。それからカーペットの色も、各エリアごとにご提案できればと思います。結城さんからは何かありますか?」

話を振られて、美怜は顔を上げた。

「はい。私からは、コンベンションセンターの方々をご案内した時の様子をお伝えしたいと思います。こちらのタブレットでコンベンションセンターの内部にバーチャルの画像を作り、色々なコーディネートのパターンをご覧いただきました。その時に、壁をむき出しにせず、カーテンで覆ったこちらの画像に非常に興味を持っていただきました」

美怜が差し出したタブレットに、皆は顔を寄せる。

「あら、綺麗ね。普通のカーテンにオーガンジーを重ねてあるの?」
「はい。イメージとしてはそうです」
「いいわね。ふわっと揺れるオーガンジーが、お花が揺れるイメージにも合うし」

一人がそう言うと、あとの二人も頷く。

「色合いを少し変えて重ねても良さそうね。グラデーションにしてもいいかも」
「そうね。お花の背景にもなる訳だから、カーテンは重点的に考えましょう」

そして三人は分厚いサンプルファイルを開き、布を選び始めた。

「柄は無地で、色はナチュラルカラーで統一しましょう。明るさもここから上にして」

しばらく顔を寄せ合って話し合った後、三人は顔を上げて卓と美怜を見た。

「おおよそのイメージは固まりました。あとは実際の備品を手配して、打ち合わせの際に先方に見ていただけるよう持参しますね」
「はい。どうぞよろしくお願いいたします」

卓と美怜は深々とお辞儀をし、話し合いは和やかに終了した。