それからしばらくの間、成瀬は美怜について頭の中で整理する日々を送る。

実家に車を返しに行くと、両親は「どうだった?」と身を乗り出して聞いてきた。

無事に結婚の許しをもらえたと伝えるとホッとしていたが、「それで?やっぱりお嬢様だったでしょ?美怜ちゃん」と母親に聞かれて頷いた。

確かに田舎だったが、とてつもなく大きな純和風の旅館のような家だったこと。

周りの家も同じような感じで、田舎とは言え古くからの家柄の良い一家が住まうエリアではないかと思ったこと。

父親は自営業で、おそらく不動産で収入を得ていること。

祖母は毎日ハイヤーで外出し、歌の会やお茶会などを楽しんでいること。

ちなみにお風呂は檜の湯船で、露天風呂もあるらしいと伝えると、両親は「羨ましい!」と食いついていた。

とにかく美怜はお嬢様だ。
それは間違いない。

そう言えばいつだったか、銀座にお寿司を食べに行った時、大将がいたくご機嫌で美怜に何度も話しかけていたことを思い出す。

あれはきっと、美怜の品の良さに感激したのだろう。

「本人の自覚がないなんて、正真正銘のお嬢様ってことよ。隼斗、本当にあなたでいいの?美怜ちゃんにふさわしくないんじゃない?」

母親にそう言われて、考え込んでしまった。