夕方になり、美怜と成瀬は東京への帰路に着く。

ハンドルを握りながら、成瀬は美怜に疑問のあれこれをぶつけた。

「美怜、一体何がどういうことか説明してくれる?」
「ん?何がどうって?」
「まず、なんであんなに家が大きいの?」
「さあ、田舎だからじゃないですか?」

あっけらかんとしている美怜に、成瀬はため息をつく。

「いくら田舎でも、あの家はすご過ぎる。美怜、前にお父さんのこと、ずっと家にいてあんまり働いてない、みたいに言ってたよね?それって本物のお金持ちだよ」
「ええー?あんなに冴えない感じなのに?着てる服も、ちょっとそこまで〜のコンビニファッションですよ。本部長のお父様みたいな方が本物のお金持ちです」
「いや、違う。絶対に違う」

きっぱり否定すると、次の質問に移った。

「美怜、実はお嬢様育ちだろ?」
「ぶっ!どこがですか?」
「普段はそんな面影はないけど、急にスイッチが入ったみたいに人が変わった。品が良くて立ち居振る舞いも美しくて」
「それはあのガミガミうるさい祖母のせいですよ。小さい頃からしつけにはうるさくて、いっつもケンカしてました」
「あのおばあさんも、普通の方ではないな」
「え?じゃあ、何者?」
「家柄の良いお嬢様だ」

またしても美怜は吹き出す。

「あんなにミーハーで口うるさいおばあ様が?そんな訳ないですって」

あはは!と笑う美怜に、成瀬は信じられないとばかりに眉根を寄せた。

(とにかく色々あり過ぎた。もう俺、今夜は一人で頭を冷やそう)

まずは安全運転で、と成瀬はそれ以上美怜を追求するのは諦めた。