「美怜…」

ようやく顔を離した成瀬は、胸に美怜をギュッと抱きしめ、髪をなでながら耳元にチュッとキスを落とす。

くすぐったさと恥ずかしさにピクンと身体を震わせる美怜の可愛らしさに微笑むと、成瀬は窓の外に目をやった。

「美怜、見て。てっぺんだよ」
「え?ほんとだ」

いつの間にか地上の輝きは小さくなり、月明かりがすぐ近くに感じられる。

「なんだか、魔法の絨毯で空に浮いてるみたい。とっても綺麗」

ぽつりと呟く美怜の横顔を、成瀬は愛おしそうに見つめる。

その視線に気づいた美怜が、成瀬を振り返って照れたように、にこっと笑った。

そして正面からギュッと成瀬に抱きつく。

え…と戸惑う成瀬の耳元で、今度は美怜がささやいた。

「隼斗さん、大好き」

そう言ってチュッと唇に可愛らしいキスをくれる。

心拍数に体温に血圧…

色んなものが一気に爆上がりしたように、成瀬の身体中を甘い痺れが駆け巡る。

(や、ヤバ過ぎる。心臓を撃ち抜かれたかと思った)

カチンコチンの成瀬に、美怜はキョトンとしながら首を傾げる。

「あれ?固まっちゃった。大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫。ちゃんと生きてるよ」
「生きてるって…。ふふっ、おかしい」

こっちは息も絶え絶えになってるのに!と、成瀬は美怜の余裕ある笑顔に悔しくなった。

「随分俺を翻弄するんだな、美怜。お返しだ」
「え、ちょ、んんっ…」

成瀬は美怜を腕の中に閉じ込めると、覆いかぶさるように熱く唇を奪う。

チュッというリップ音が二人切りのゴンドラに響き、だんだん空気が熱を帯びていく。

ゆっくりとゴンドラが下る感覚の中、美怜は成瀬の腕に抱かれ、夢見心地で愛される喜びを感じていた。