美味しい朝食を味わうと四人は、オランダ宮殿の外観を忠実に再現したパレスに向かった。

「うわー、なんて豪華なの。美しくて圧倒されちゃう」

宮殿内部の美術館、ドーム型の壁画、天井のレリーフもさることながら、なんと言っても目を奪われるのは、宮殿の後方に広がるバロック式の庭園だ。

ヨーロッパの造形美を極めた広大な庭園は、十八世紀にオランダ宮殿の為に設計されたものの実現しなかった『幻の庭園』を甦らせている。

ギリシャ神話をベースに神殿のように配列された柱、噴水や彫刻、装飾花壇が美しく、うっとりと見惚れながら歩く美怜と友香の写真を、成瀬も卓もたくさん撮影した。

「あそこの大きな時計、針が一本しかないだろう?昔の時計は短針しかなかったんだ。それを忠実に再現してあるらしいよ、時間を忘れた鳩さん」

感心して耳を傾けていた美怜は、最後のひと言にむーっと膨れて成瀬を見上げる。

「今日の鳩時計は終日お休みです」

プイとそっぽを向いて歩き出すと、成瀬が後ろから手を伸ばして美怜を抱きしめた。

「ごめん。機嫌直して」

そう言って美怜の髪に口づける。

「ちょ、あの、友香ちゃん達がいるのに」
「大丈夫。富樫と二人で見つめ合ってて気づいてない」
「それにしても、その、周りに人がいるし」
「じゃあ機嫌直してくれる?」
「はい、まあ…」

すると成瀬は、ありがと、と言ってそのまま美怜の耳元にチュッとキスをした。

「ちょ、だめです!」

美怜は慌てて振り返り、成瀬の胸を押し返す。

「真っ赤になって可愛いな。ほら、行こう」

何事もなかったかのように、成瀬はさり気なく美怜の手を繋いで歩き出す。

美怜が無理やり手を引っ込めると、今度はグイッと腰を抱いてきた。

フガーッと美怜はムキになって、なんとか成瀬の腕から逃れようとする。

すると卓がふいに振り返った。

「どうした?美怜。こんなところでプロレスごっこか?」
「そんな訳ないでしょ!」

ようやく腕を離した成瀬が、笑いをこらえながらまたしても耳元でささやく。

「夜に可愛い鳩さんに会えるのを楽しみにしてる」

美怜は顔を赤らめて言葉を失っていた。

日中は四人で園内を散策し、美味しいチーズフォンデュを味わってからアトラクションを楽しむ。

馬車で園内を巡ったり、高い展望台に上ったりと、綺麗なヨーロッパの街並みに美怜と友香の笑顔は絶えない。

少し早めに温泉に行くと、部屋に戻って夜のショーを窓から眺めた。

そこからは恋人と過ごす時間だ。

美怜と友香はオシャレして、かっこいい成瀬と卓とそれぞれ腕を組み、夜の街へ繰り出した。