無事に店舗の駐車場まで戻ってくると、エンジンを切った成瀬が美怜に顔を向けた。

「せっかくだし、美怜も運転してみる?」
「はっ?!」
「オートマだから、運転しやすいよ」

これまた、いやいやいやーと手を振っていると、セールスマンも後部座席から聞いてきた。

「奥様も免許お持ちなんですか?」
「持ってますけど、田舎道しか走ったことないです。こんな都会なんて、自分の足で歩くのもままならないのに…」

あはは!と成瀬はこらえ切れずに笑い出す。

「確かに美怜、方向音痴なところあるもんな。どっちから来たっけ?とかよく言ってるし」
「方向音痴じゃなくて、交通量の多さの話です!」

美怜がむーっとふくれっ面になると、でしたら!とセールスマンが後ろから身を乗り出した。

「奥様、この駐車場の中をゆっくり一周してみませんか?ここなら広いし私有地ですし」
「え?ここを、ですか?」

確かに広い駐車場は信号もなければ他に走っている車もない。

ゆっくり走っても煽られたりしないし、バックで駐車する必要もなかった。

「そうしよう、美怜。ほら、交代」

シートベルトを外すと、成瀬はそそくさと降りて助手席のドアを開けた。

仕方なく美怜は運転席に座ってハンドルを握る。