「本当に楽しかったなあ。私、普段から友達が少なくて。だから美怜さんとお知り合いになれたことが何より嬉しいんです」
「そっか。まあ、あいつがいれば嫌でも楽しくなるからな。一家に一台、みたいな」
「まあ!卓さんったら。美怜さんは素敵な女性ですよ?家電じゃありません」
「家電って…」
ははっ!と卓は笑い出す。
「想像しちゃった。美怜がテレビになってペチャクチャしゃべってるとこ。あはは!」
「卓さん!」
もう一度咎めてから、友香は少しうつむいて視線を落とした。
「どうかした?」
卓が真顔に戻って尋ねる。
「いえ、あの…。卓さんと美怜さん、とても仲がいいんですね」
「まあ、同期だからね」
「そうですか。あの、卓さんはやっぱり、美怜さんのような明るくて社交的な方がお好きなんですか?」
「ん?何その、私じゃだめですか、的なニュアンス」
そう言うと、友香はみるみるうちに真っ赤になって固まった。
「えっ!ちょ、待って。冗談だよ?ごめん。君が俺にそんなこと思う訳ないのは分かってるから」
「いいえ、思う訳あります!」
パッと顔を上げて真剣に見つめてくる友香に、卓は思わず息を呑む。
「卓さんは私にとって、初めてできた男性の友人でした。何も身構えずに何でも話せて、一緒にいると心地良くて。でも最近、ちょっと苦しくなってきたんです。卓さん、私と話して楽しいのかな?私は美怜さんみたいに話を盛り上げられないから、つまらないって思われてるのかもって」
だんだん声が小さくなり、ついには沈黙が広がった。
友香は膝の上に置いた両手の拳をギュッと握りしめる。
すると卓が、ふっと笑った。
「君だって最高に面白いよ。なにせ、出逢ってすぐに『ダーリン』だぜ?なかなかいないよ、そんな子」
「いや、それは…」
「生粋のお嬢様なのにな。そのギャップも面白い。しかも、もう二度と呼ばない、忘れるって言ってたのに、まさかの二度目」
「ですから、あれは…」
「三度目もあるかな?」
「ありませんよ!」
「いや、きっとあるね」
卓は面白そうに笑ってから、優しく友香に微笑んだ。
「三度目もあるか確かめたいから、これからもずっと一緒にいてくれない?」
「…えっ」
友香は小さく息を呑む。
「それは、どういう…?」
「だから、ダーリンとハニーでいて欲しいってこと。あ、でも俺、君に話してないことがあるんだ。聞いたら君はがっかりして俺から離れていくかも…」
ええ?!と、今度は大きな声を出してしまった。
(一体どんな隠し事を?もしかして、他に好きな人がいるとか?ううん、もっとすごいことかもしれない。実は結婚してるんだ、とか?あ!子どももいるとか?)
ドキドキしながら卓の言葉を待つ。
「実は…」
ゴクリと友香は喉を鳴らす。
緊張は最高潮に達していた。
「あの車、成瀬さんのなんだ」
「………………は?」
間抜けな顔で間抜けな声を発してしまう。
「えっと、一体何のお話を?」
「だから旅行中に乗ってたあの白いスポーツカー、成瀬さんの車なんだ。俺は運転してただけ」
「は、はあ…。それが、何か?」
「いやだって、女の子はかっこいい車を運転する男が二割増しにかっこ良く見えるって言うだろ?いや、三割増しだっけ?」
卓は真剣に聞いてくる。
「えっと、統計学的には分かりませんが、だいたい二割増しくらいではないかと…」
「そうか。だからさ、君も俺のことを二割増しで見てたと思う。運転してたのが成瀬さんだったら、君はもしかして、成瀬さんのことを好きに…」
「なりません!」
友香はきっぱりと否定する。
「私はあの車を運転する卓さんを好きになったのではありません。もっとずっと前に…。パーティーであなたが私に、ハニーって答えてくれた時からです」
真っ直ぐな瞳できっぱりと告げられ、卓は思わず言葉を失う。
だが、ふっと頬を緩めて嬉しそうに笑った。
「俺も。ダーリンって呼ばれた瞬間、君に落ちた。一目惚れならぬ、一声惚れ、かな?」
友香は信じられないとばかりに目を見開く。
「これからもずっと一緒にいよう」
「それは、ダーリンとハニーのお笑いコンビとして?」
「違うよ。卓と友香っていう、恋人同士として」
すると友香の瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「…売れるかな?そんなコンビ名で」
「ぶっ!売れなくていいから」
思わず突っ込んでから、卓は優しく友香に微笑む。
「売れないけど必ず幸せになる。してみせるよ、友香」
「はい。ありがとうございます、卓さん」
涙をこらえながら頷く友香に、卓は愛おしそうな眼差しで頷き返した。
「そっか。まあ、あいつがいれば嫌でも楽しくなるからな。一家に一台、みたいな」
「まあ!卓さんったら。美怜さんは素敵な女性ですよ?家電じゃありません」
「家電って…」
ははっ!と卓は笑い出す。
「想像しちゃった。美怜がテレビになってペチャクチャしゃべってるとこ。あはは!」
「卓さん!」
もう一度咎めてから、友香は少しうつむいて視線を落とした。
「どうかした?」
卓が真顔に戻って尋ねる。
「いえ、あの…。卓さんと美怜さん、とても仲がいいんですね」
「まあ、同期だからね」
「そうですか。あの、卓さんはやっぱり、美怜さんのような明るくて社交的な方がお好きなんですか?」
「ん?何その、私じゃだめですか、的なニュアンス」
そう言うと、友香はみるみるうちに真っ赤になって固まった。
「えっ!ちょ、待って。冗談だよ?ごめん。君が俺にそんなこと思う訳ないのは分かってるから」
「いいえ、思う訳あります!」
パッと顔を上げて真剣に見つめてくる友香に、卓は思わず息を呑む。
「卓さんは私にとって、初めてできた男性の友人でした。何も身構えずに何でも話せて、一緒にいると心地良くて。でも最近、ちょっと苦しくなってきたんです。卓さん、私と話して楽しいのかな?私は美怜さんみたいに話を盛り上げられないから、つまらないって思われてるのかもって」
だんだん声が小さくなり、ついには沈黙が広がった。
友香は膝の上に置いた両手の拳をギュッと握りしめる。
すると卓が、ふっと笑った。
「君だって最高に面白いよ。なにせ、出逢ってすぐに『ダーリン』だぜ?なかなかいないよ、そんな子」
「いや、それは…」
「生粋のお嬢様なのにな。そのギャップも面白い。しかも、もう二度と呼ばない、忘れるって言ってたのに、まさかの二度目」
「ですから、あれは…」
「三度目もあるかな?」
「ありませんよ!」
「いや、きっとあるね」
卓は面白そうに笑ってから、優しく友香に微笑んだ。
「三度目もあるか確かめたいから、これからもずっと一緒にいてくれない?」
「…えっ」
友香は小さく息を呑む。
「それは、どういう…?」
「だから、ダーリンとハニーでいて欲しいってこと。あ、でも俺、君に話してないことがあるんだ。聞いたら君はがっかりして俺から離れていくかも…」
ええ?!と、今度は大きな声を出してしまった。
(一体どんな隠し事を?もしかして、他に好きな人がいるとか?ううん、もっとすごいことかもしれない。実は結婚してるんだ、とか?あ!子どももいるとか?)
ドキドキしながら卓の言葉を待つ。
「実は…」
ゴクリと友香は喉を鳴らす。
緊張は最高潮に達していた。
「あの車、成瀬さんのなんだ」
「………………は?」
間抜けな顔で間抜けな声を発してしまう。
「えっと、一体何のお話を?」
「だから旅行中に乗ってたあの白いスポーツカー、成瀬さんの車なんだ。俺は運転してただけ」
「は、はあ…。それが、何か?」
「いやだって、女の子はかっこいい車を運転する男が二割増しにかっこ良く見えるって言うだろ?いや、三割増しだっけ?」
卓は真剣に聞いてくる。
「えっと、統計学的には分かりませんが、だいたい二割増しくらいではないかと…」
「そうか。だからさ、君も俺のことを二割増しで見てたと思う。運転してたのが成瀬さんだったら、君はもしかして、成瀬さんのことを好きに…」
「なりません!」
友香はきっぱりと否定する。
「私はあの車を運転する卓さんを好きになったのではありません。もっとずっと前に…。パーティーであなたが私に、ハニーって答えてくれた時からです」
真っ直ぐな瞳できっぱりと告げられ、卓は思わず言葉を失う。
だが、ふっと頬を緩めて嬉しそうに笑った。
「俺も。ダーリンって呼ばれた瞬間、君に落ちた。一目惚れならぬ、一声惚れ、かな?」
友香は信じられないとばかりに目を見開く。
「これからもずっと一緒にいよう」
「それは、ダーリンとハニーのお笑いコンビとして?」
「違うよ。卓と友香っていう、恋人同士として」
すると友香の瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「…売れるかな?そんなコンビ名で」
「ぶっ!売れなくていいから」
思わず突っ込んでから、卓は優しく友香に微笑む。
「売れないけど必ず幸せになる。してみせるよ、友香」
「はい。ありがとうございます、卓さん」
涙をこらえながら頷く友香に、卓は愛おしそうな眼差しで頷き返した。