「大丈夫?何もされてない?」

卓に心配そうに顔を覗き込まれて、友香は目に涙を浮かべる。

「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「嫌な思いしたね。もう大丈夫だから。これからは俺のそばにいて」
「はい。あの、ごめんなさい。もう呼ばないって言ってたのに、また呼んじゃって…」

ん?何が?と首をひねってから、ああ!と卓は思い出す。

「ほんとだね。俺もつい返事しちゃった」
「すみません、お恥ずかしい」
「いや、もうさ。コンビ名ってことにしようよ。お笑いコンビの、ダーリンとハニー」

ええ?と驚いてから、友香は吹き出して笑い始めた。

「お笑いコンビの名前が『ダーリンとハニー』なんて。絶対売れないですよ?」
「そうかな?案外意表を突いて売れるかもよ?ほら、インパクトあるじゃない」
「インパクトというよりは、ベタ過ぎません?」
「ベタでいいんだよ。お笑いなんだから」
「えー、売れるかな?」
「分かんないけど。でもいいコンビなのは間違いない」

え…と、友香は真顔に戻る。

「いいコンビって、私と卓さんが?」
「うん。息ぴったりじゃない?ダーリンとハニーのコール&レスポンスが」
「は?」

目が点になったあと、またしても友香は笑い出す。

「おかしい!卓さんったら」
「ね?笑えるでしょ?」
「ふふふっ、はい」

怖い思いをしたことも忘れて、友香は明るく卓に笑いかけた。