「それではこのあとは私が作業しまして、焼き上がったらご自宅に配送します。器の表面につける釉薬(ゆうやく)の色を選んでもらえますか?」

職人のおじいさんが差し出した色見本を見ながら、美怜は瑠璃釉、友香は薄いピンクの釉薬、卓は綺麗な緑色の織部釉、そして成瀬は青磁釉を選んだ。

「お手元には一ヶ月程で届くと思います」
「はい、楽しみにしています。よろしくお願いします」

工房をあとにすると、四人は次に古民家を改装したそば屋に向かう。

古い蔵の梁を生かした趣のある店内で、すりおろした生わさびと一緒に美味しい信州そばを味わった。

最後にショッピングモールで買い物を楽しむ。

広い物産コーナーで、地元ならではのお土産を思い思いに選んでいる時だった。

「ねえ、彼女。一人?」

ふいに声をかけられて、友香は振り返る。

若い男性二人がニヤニヤしながら友香を見下ろしていた。

「女の子が一人でいたら危ないよ?俺達が守ってあげる」

そう言って強引に友香の肩を抱く。

「いえ、結構です!私、友人と一緒なので」

危ないよって、今この状況が危ないじゃないのよ、と思いながら、友香は男性の手を振り払った。

「お、気が強いね。俺、そういう子好きなんだ」

男性は諦めるどころか、更に強引に友香を抱き寄せる。

「やめてください!」

身をよじりながら、友香は美怜を探した。

(あ、いた!)

少し離れた所でお菓子を選んでいる美怜を呼ぼうとすると、男達はまたもやニヤけた顔で話しかけてきた。

「ねえ、お友達はどこー?その子も一緒に行こうよ」
「ええ?!」

今美怜が見つかれば、一緒に連れて行かれる。
そう思い、友香は口をつぐんだ。

「おとなしくなったね。じゃあ行こうか」
「やめてください!私、そう!彼と来てるんです」
「またまたー。さっきは友達って言ってたじゃない。嘘は良くないよー?」
「本当です!ほら、あそこに…、卓さん!」

友香は必死に抵抗しながら、店の入り口近くにいる卓を見つけて呼びかけた。

だが卓は気づかない。

「えー、あそこにたくさん?君、彼氏たくさんいるんだ。ははっ!面白いこと言うね。じゃあ俺達も仲間に入れてよ」
「嫌です!離してってば。私、本当に彼氏と…」

友香は懸命に逃れようと腕に力を込めながら、もう一度卓を振り返った。

「ダーリン!」

すると卓がくるりと振り返り、友香と目が合うとツカツカと近づいて来た。

「呼んだ?ハニー」

そう言うと友香の肩をグイッと抱き寄せて、男達を睨みつける。

「人の女に触るんじゃねーよ」

男達はチッと舌打ちをすると、ふてぶてしい態度で立ち去って行った。