「おはようございます!」

翌朝。
朝食ビュッフェのレストランの前で待っていた成瀬と卓に、美怜は元気百倍の挨拶をする。

「お、おはよう」

面食らいつつ返事をした成瀬と卓は、友香にも「おはよう」と挨拶した。

コートヤードが眺められる窓際の席に案内されると、早速四人はブュッフェカウンターに向かった。

「あの、本部長」

後ろから美怜に小声で話しかけられ、お皿を手にした成瀬は、ん?と振り返る。

「どうかした?」
「はい、あの…。本部長ともあろうお方に、大変失礼なお話で恐縮なのですが…」
「なに?その前振り。え、俺、ボケた方がいい?」
「いえ、ボケは結構です」
「あ、そう…」

ますます怪訝そうに成瀬は美怜の様子をうかがった。

「それで?俺に何か頼みでも?」
「はい、本部長。失礼ながら、今日はわたくしと仲良くしていただきたいのです」

…は?と、成瀬は間抜けな顔で固まる。

「仲良くって、なに?どうすればいいの?」
「ですから、親しげな雰囲気を醸し出したいのです」
「…その心は?」
「友香ちゃんと富樫さんを良いムードにさせる為です」

ああ、とようやく合点がいったように、成瀬はしたり顔になった。

「なるほどね。お見合いの仲人みたいな感じ?」
「そうです。あとは若いお二人でごゆっくり…と、私達は離れたところから見守ろうかと」
「君も若いんじゃないの?」
「それはこの際どうでもいいです。今日の私は本部長と同年代でまいります」
「じゃあ、親父ギャグにも笑ってよ?」
「うぐっ…、かしこまりました。気分は八十年代で」

ヒソヒソとやり取りしたあと、よし、と二人は気合いを入れて頷き合った。