チェックインの時間より少し早く、「ご用意ができましたのでお部屋へどうぞ」と声をかけられ、それぞれの部屋に向かった。

「美怜さん、見て!外の景色がとっても綺麗」
「本当ね。これぞ別荘地って感じ。都会で揉まれた私の心のけがれが、マイナスイオンで浄化されるわ」
「あはは!美怜さんったら、おかしい」

二人はおしゃべりしながら、旅行バッグから次々と服やメイク道具を取り出す。

せっかく軽井沢に来たのだからと、二人は初夏の装いのワンピースに着替えることにした。

美怜は淡いブルーの七分袖のワンピース。
友香のワンピースは薄いピンク色で、袖がパフスリーブになっている。

可愛い!と褒め合い、お互いに相手の髪型を整えることにした。

友香は美怜の髪をゆるくサイドでまとめてふわっと左肩に載せ、前髪もおでこにかからないようにヘアアイロンで横に流す。

「うん!綺麗なお姉さんの完成」

満足そうに笑いかけてくる友香を、今度は美怜がドレッサーの前に座らせた。

「友香ちゃんの髪型は、若くてキュートなイメージにしようっと」

そう言ってヘアアイロンで毛先をカールさせると、後頭部のてっぺんより少し低い位置で一つに結ぶ。

少し髪を掬ってクルクルと結び目に巻きつけ、ふわふわと動きのあるポニーテールに仕上げた。

「できた!可愛いー!」

二人で一緒に写真を撮って盛り上がっていると、コンコンとドアがノックされる。

「美怜、友香さん、支度できた?そろそろ街に行かない?」
「はーい、今行きます!」

卓に返事をすると、美怜と友香はサンダルを履き、斜め掛けの小さなバッグを掛けて部屋を出た。

「うわ、びっくりした。二人ともガラッと雰囲気変わったね。一瞬、知らない人かと思っちゃった」
「卓、そういうセリフはいらないの。ひと言、可愛いね!だけで。ねえ?友香ちゃん」

美怜が友香を振り返り、ほら!と手を引いて卓の前に立たせる。

「ああ。ほんとに可愛いよ」
「ふふ、言わされた感がありますけど。ありがとうございます、卓さん」
「いや、ほんとに可愛いって」
「そんなにムキになられると、ますます…。ねえ、美怜さん」

まあまあ、と二人をとりなしてから、美怜は「じゃあ、行きましょうか」と皆を促した。