ゆっくりと滑るように車が動き出す。
ジャケットを脱いで美怜に預けると、カフスボタンを外してシャツの腕をまくり、前を見据えて鮮やかにギアを操作する卓を、美怜は隣でそっと見つめていた。
「なに?美怜。俺の顔に何かついてる?」
「え?まあ、目と鼻と口が」
「おい!」
卓は前を向いたまま美怜に突っ込む。
「なんだか卓がかっこ良く見えちゃって」
「ほんとはかっこ良くないのに、みたいに言わないでくれ」
「でもほんとにそう思うよ」
「一旦俺の言葉を否定しろ」
「あはは!そうだね」
「だから、否定!」
自然といつものようなやり取りになり、卓は複雑な心境になった。
(親友の関係が終わったと思ってるのは俺だけかもしれない。会わなくなっても美怜はまだ、心の中では俺のことを親友だと思ってくれているのかも)
そう考えた途端、それなら嬉しい、それだけで幸せだ、と卓は思った。
そんな二人の様子を後ろから見ていた成瀬もまた、心の中でひとりごつ。
(二人ともこんなにお似合いなのに、どうして結城さんは富樫とつき合わないんだろう。男の俺から見ても、この車を運転している富樫はかっこいい。そうだ!車を買い換えるなら、富樫にこの車を譲ろう。うん、赤の他人に売るより富樫に乗ってもらいたい。結城さんも富樫の運転で出かけるうちに、富樫を好きになるかもしれない)
そうなればいいと願いつつ、息の合った会話を繰り広げる二人を微笑ましく眺めていた。
ジャケットを脱いで美怜に預けると、カフスボタンを外してシャツの腕をまくり、前を見据えて鮮やかにギアを操作する卓を、美怜は隣でそっと見つめていた。
「なに?美怜。俺の顔に何かついてる?」
「え?まあ、目と鼻と口が」
「おい!」
卓は前を向いたまま美怜に突っ込む。
「なんだか卓がかっこ良く見えちゃって」
「ほんとはかっこ良くないのに、みたいに言わないでくれ」
「でもほんとにそう思うよ」
「一旦俺の言葉を否定しろ」
「あはは!そうだね」
「だから、否定!」
自然といつものようなやり取りになり、卓は複雑な心境になった。
(親友の関係が終わったと思ってるのは俺だけかもしれない。会わなくなっても美怜はまだ、心の中では俺のことを親友だと思ってくれているのかも)
そう考えた途端、それなら嬉しい、それだけで幸せだ、と卓は思った。
そんな二人の様子を後ろから見ていた成瀬もまた、心の中でひとりごつ。
(二人ともこんなにお似合いなのに、どうして結城さんは富樫とつき合わないんだろう。男の俺から見ても、この車を運転している富樫はかっこいい。そうだ!車を買い換えるなら、富樫にこの車を譲ろう。うん、赤の他人に売るより富樫に乗ってもらいたい。結城さんも富樫の運転で出かけるうちに、富樫を好きになるかもしれない)
そうなればいいと願いつつ、息の合った会話を繰り広げる二人を微笑ましく眺めていた。