祝賀パーティー当日。

美怜は早めにミュージアムの業務を抜けさせてもらい、本社近くにある美容室に向かった。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは。十七時に予約しました結城です」
「お待ちしておりました、結城様。本日はパーティー用のヘアメイクをご希望ですね」
「はい。セミフォーマル!でお願いします」
「かしこまりました」

にこやかなスタッフに席に案内され、どのようなスタイルに?イメージはありますか?と聞かれるたびに「セミフォーマルで!」を貫き通す。

「お召し物は?」と聞かれて美怜が持参したドレスを見せると、スタッフはドレスをハンガーに掛け、美怜とドレスを交互に見比べながら手際良くメイクを整えていく。

そのドレスも購入する際も、「セミフォーマルで!」の一辺倒で見繕ってもらっていた。

メイクを終えると髪をアイロンで巻いてから、キュッとひねってピンで留めていく。

一時間ちょっと経ったところで、ようやくスタッフが満足そうに頷いた。

「いかがでしょう?髪型は毛先を巻いて、ふんわりと華やかなアップスタイルに仕上げました。後ろもたくさんのパールのピンで飾ってあります。前髪はサイドに流して大人っぽい印象になったかと」

美怜はまじまじと鏡に映る自分を見つめる。

これが本当に私?と、半信半疑で顔を動かしてみた。

鏡の中の顔も同じように動くのを見て、やっぱり私なんだ、と妙に納得する。

目元はくっきりとしていてまつ毛も長くクルンとカールし、肌はきめ細やかに、頬はチークで明るい印象だ。

「別人みたい。ヘアメイクってこんなにすごいんですね」
「ふふっ、ありがとうございます。結城様のお肌がとてもみずみずしくて、目鼻立ちも整っていらっしゃるので、腕が鳴りました」
「魔法使いのようですね、ありがとうございました」
「嬉しいですわ。こちらこそありがとうございます」

鏡越しに美怜はスタッフと微笑み合った。