「親友の関係が崩れるのが嫌で。あいつの笑顔を見られるだけでいい、だから告白もしないでおこうと思ってたのに。結果として、告白もしないまま親友の関係も終わってしまいました。ほんと、何やってんだろう、俺。自分が情けなくて」

そう言うと卓はグイッとビールを煽る。

「ねえ、卓くん。それならさ、今からでも美怜に告白したら?」

美沙の言葉に、え?と卓は顔を上げた。

「親友の関係が崩れたんなら、もう怖いものなんかないでしょ?美怜にちゃんと言いなよ。彼女なんていない、好きなのは美怜だって」

すると佳代も、うんうんと頷く。

「そうだよ、卓くん。このまま辛い気持ちを抱えてても、苦しいだけでしょ?告白すれば、うまくいく可能性だってあるんだから」
「いや、それはないです」
「どうして?」
「見てれば分かります。あいつ、俺に恋愛感情なんて全く持ってませんよ」
「それは告白してみないと分からないよ。好きだって言われて初めて、卓くんの存在を見つめ直すかもしれないし」

佳代と美沙が身を乗り出して力説するが、卓は、うーん、とうつむいたままだ。

「告白して、きっぱり断られたら?そうなればもう俺、絶対に立ち直れない自信があります」
「そ、そんなところに自信持たなくても…」
「すみません。お二人とも俺のことを心配してくれてるのに、不甲斐なくて。でも今は、とにかく勇気がなくて。これ以上傷つきたくないんです。すみません、本当に」
「ううん、謝らなくていいから」

それ以上は言えず、ただひたすら「元気出して。私達にできることならなんでもするから」と、二人は卓を励まし続けた。