「お疲れ様」

電話をスピーカーに切り替え、ベッドに横たわって答える。

「夏祭り、一緒に行ってくれるんですね!嬉しいなぁ」

私よりも精神的に大人なはずの森川だが、無邪気な子供みたいだと感じることも多い。

「でも、先輩に確認しておきたいことがあって」

「ん?」

「あの…先輩って、恋人が居たりしますか?」

やたらストレートな質問に、つい吹き出してしまい、

「居ないよ」

「本当に?あーよかった!夏祭りに誘ったはいいけれど、恋人が居たらどうしようかと思って、電話しちゃいました」

「私だって、少しは学習してるからね」

「学習ですか?」

「うん。あれは、高校の頃に付き合って…」

「ああー!もういいですから、大丈夫です!よくわかりました!安心しました!」

部屋中に、森川の慌てたような声が響く。

「とにかく、僕は嬉しかったんです」