「うわ!そんな素直だと、余計に心配になるんですけど」

「…どっちなのよ?」

ムッとして森川を見上げると、心配しているとは思えないような、とても嬉しそうな顔をしていた。

ハッキリとは覚えていないが、あの頃は今のような身長差もなかったはず。

甲高い声で、ヘラヘラしていて、ぶりっ子のあざとい男子…そんな印象しかなくて、細かいことまでは思い出せない。

あざとい森川も嫌だったし、そんな森川を甘やかす周りに対しても、軽い苛立ちを感じていた。

他愛ないことを話しながら歩いていたら、今はもう私の自宅前だ。

「私の家、ここだから」

森川の家が何処かは知らないが、きっとこの先なのだろう。

「知ってますよ。先輩、来月の読書会も参加しますか?」

「そのつもりだけど」

「よかった。僕も参加するので、楽しみにしてますね!」

森川は、手を振りながら来た道を歩き始めた。

あれ…?