そう言いかけたものの、思わず飲み込んだ。

今日の私は、どうかしている。

さっきのレストランで飲んだワインのせいだろうか?

普段は、数杯のワインぐらいでは素面同然なのに。

認めたくないが、森川に振り回されているのだ。

「僕って、どうしたって先輩のこと怒らせちゃうみたいですね」

森川は少しシュンとしている。

「怒ってないわよ」

「本当に?」

「怒ってないって言ってるでしょ!」

「やっぱり怒ってるじゃないですか」

心底、自分で自分が嫌になる…。

どうして、こんな刺々しい物言いしか出来ないのだろう。

怒っていないのは本当のことだ。


「今の彼女は優しいし、おっとりしていて癒されるんだ」

突然、初めて付き合った男の言葉がフラッシュバックする。

自然消滅して、久々に再会した時、新しい彼女のことを嬉しそうにそう話していた。