「え?今から?」

そう言うとお兄ちゃんはチラッと私の顔を見た。

まるで私の顔色を伺うかのように…。

『いいよ…?会いに行きなよ。私は大丈夫だから…。』

口にしたくない言葉を並べる…。

心はどんより雲がかかって暗くなってく…。

「そっか?わりいな!後で必ず迎えに来るから!」

携帯を耳から離してそう言うと

「全然大丈夫!すぐ行くよ!!」

すぐにまた耳に付け

電話の向こうの彼女

美雪さんにそう言った…。

『迎えになんか来なくていいよ…バカ兄』

ポツリとそう呟いた…。

絶対に隣に座ってるお兄ちゃんには聞こえない。

なんせ彼女とまだ楽しそうに話してるし…。

なんか私とは別世界な気がする…。

後で断りのメールでも送ろう。

今のお兄ちゃんは嫌いだから…。

彼女に会って来たついでにはなりたくない…。

「じゃあ行ってくるな?」

ソファーから立ち上がり

車のキーをズボンのポケットから取り出し

携帯と車のキーを片手に

そう言って頭を一撫でしてきた…。

嬉しいはずなのに…。

すごく、すごく

苦しいよ…。

泣きそうだよ…。

「ジュース残しちまったから…捨てといてくれな?」

『うん…。』

短く返した私の返事に小さく微笑(ワラ)うとまた頭を撫でてくれた…。