次なる悪妃作戦が思いつかないまま、10日ほどが過ぎ……
その間ヴィオラは、ラピズ探しに手を尽くしていた。

 だか依然として、その消息は掴めず。
ヴィオラは日に日に落ち込んでいった。

 そんな時。
部屋にやって来たサイフォスから、興味深い事を持ち掛けられる。

「剣術観戦が好きだと聞いた。
それで、剣術大会を企画したんだが、ようやくその手筈が整った。
開催は一週間後だ、楽しみにしていてくれ」

「……観戦前提なのですね。
私が断るとは思いませんでしたか?」

 そこで見かねたウォルター卿が、「妃殿下!」と口を挟む。

「殿下は妃殿下を喜ばせようと、忙しい最中寝る間も惜しんで、このために奔走していたのですよっ?」

 するとサイフォスは威圧のオーラで、制止の手をかざした。

「先走ってすまなかった。
だがこの大会には、国中から凄腕の剣士を集めている。
見応えがあるものになるだろう。
それにシュトラント公爵を始め、多くの貴族たちも観戦する事になっている。
君が顔を出さないわけにはいかないだろう?」

ーーやられた!
またしても舌を巻くヴィオラ。
断れば、父親の顔を潰してしまうだけじゃなく。
今後は監視の目が向けられて、悪妃に扮するのが難しくなるからだ。

 それに実際。
そのような見応えがある大会を特等席で観戦出来る、またとないチャンスでもあった。

「……そうですね。
殿下の策略通り、観戦して差し上げます」
せめてもの嫌味を零すも。
その内心は、剣術大会を心待ちにしていた。

 もしかしたらラピズが参加するかもしれないと、淡い期待も抱いていたからだ。

 さらにこの大会を機に、次なる悪妃作戦も思い付く。