ところがフラワベルは、「あなたの指図は受けないないわ」と去って行ったのだった。

 とはいえ、この部屋に通さなければいいだけだと、ヴィオラは悪妃作戦に奮い立った。

 というのも、実のところ。
自分の目的のために、周りの人に迷惑をかけてる事や。
ラピズがいなくなった今となっては、離婚が無意味かもしれない事。
なによりサイフォスへの罪悪感から、悪妃作戦を躊躇っていたのだが……

 上手く離婚に漕ぎ着ければ。
それにより、サイフォスとフラワベルが結ばれれば。
その方がサイフォスにとって幸せに違いないと。
自分だけじゃなく、皆のためになると。
心置きなく、悪妃になれると思ったからだ。

 だがそんな思いとは裏腹に、ヴィオラの脳裏には……
100本以上にも及ぶ薔薇を、王太子自らが摘み取ってくれたと物語る、傷だらけの手や。
これほど非礼な妃だというのに、その心苦しさに気付いてくれただけじゃなく。
抱きしめて、ずっと髪を撫で続けてくれた事が浮かんで。
なぜだか胸がズキリと痛んだ。

 しかしヴィオラは、その痛みを押し退けるようにして、新たな悪妃作戦に頭を捻らせた。

 そう、してくれた事を踏み躙るだけでは埒があかないし。
今までの経緯から、離婚に結びつくのは難しいと判断したのだ。
そのうえ相手が何もしなくなれば、被害を与える事すら出来ない。
つまりはこちらから仕掛けて。
もう限界だと、ウンザリするように仕向けようと考えたのだ。