どうやら、予約していないお客様のようだ。
 
「も、申し訳ありません、たった今完売しまして……」

 今日はカットケーキもすべて売り切れてしまった。
 
「そんな……。ばあちゃんが、ここのケーキ、好きで……」

 男の子はがっくりと肩を落としたと思うと、私が作業台に置いたケーキを見て目を瞬かせる。
 
「そのケーキは!?」
「あっ、こ、これは……。クリスマスケーキじゃないんです」
「なんでもいいです! 売ってください!」

 男の子は、すごい迫力で頼んでくる。
 どうしよう、お父さんがせっかく作ってくれたケーキなのに……。
 それに、売り物として出してるケーキじゃないから値段もついていない。
 
 圭ちゃんと一緒に困っていると、厨房からお父さんがやってきた。
 
「売って差し上げなさい、祥子」