お客様が代金を支払い、笑顔で受け取ってくれる。
 この瞬間が、やはり一番嬉しい。
 
「やっぱりここのケーキが一番だわ」
 
 最後に嬉しい言葉も聞けて、1日の疲れが吹っ飛ぶようだった。

「ありがとうございました!」

 さて、そろそろ閉店の準備をしなきゃと出入口へ向かおうとした時、圭ちゃんが厨房から顔を出した。
 
「お疲れ、祥子」
「圭ちゃんも、お疲れ様!」

 お互いを労うと、圭ちゃんが何か言いたげに、もごもごしている。
 それに、何か後ろに隠しているようだ。
 
「あ、あのさぁ、祥子……」
「ん?」
「これ……」

 そう言いながら圭ちゃんが後ろから出したのは、いちごのたくさん乗ったホールケーキだった。
 
「あれ? まだひとつ余ってた?」

 今日の予約分は全部お客様が取りに来たはずだけど……。
 でも、クリスマスの飾りがついていない。