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「うぅ〜ん、圭ちゃん、もう食べられないよぉ……」

 わんこそばみたいに、どんどん皿に出てくるケーキ。
 無限に食べられるかと思っていたけれど、どうやらそうでもなかったようだ。
 
「……ハッ」

 目を覚ますと、枕によだれがついていた……。
 
「なんだぁ……夢か……」

 口元を拭いながら、身を起こす。
 目覚まし時計はちょうど6時になり、けたたましい電子音が鳴り響いたので、まだ完全に眠気の覚めない顔でそれを止める。
 
 それにしても、懐かしい夢だったな。
 圭ちゃんは、近所に住む同い年の男の子で、幼馴染だ。
 本当は名取(なとり)圭樹(けいき)って名前なんだけど、私は昔からずっと「圭ちゃん」と呼んでいる。
 あれから圭ちゃんは、毎年私の誕生日にケーキを作ってくれるようになった。
 高校生になってからは、うちにアルバイトに来てくれて、腕もどんどん上達しているのがわかる。
 
「今年も楽しみだな♪」

 さて、そろそろ起きて着替えなきゃ……とベッドから下りた時、階下で何かが崩れたような、ガシャンという音が響いた。店の厨房の方だ。
 
「な、なに……!?」