「昨日は、息子が無理を言ってすみませんでした」
「いいえ、 おばあさまには喜んでいただけましたか?」

 訊ねると、女性は顔を上げて笑顔になった。
 
「はい、それはもう、おかげさまで!」
「ばあちゃん、あのケーキ見るなり目を輝かせちゃってさ!」

 続けて、捲し立てるように男の子が間に入ってきた。
 
「昨日が峠だと言われていたのに持ち直したんですよ!」
「ええっ!? それは良かったです!」

 ケーキで持ち直すなんて、そんなことあるの? と驚いたけど、二人の表情を見れば本当のことなのだろうとわかる。
 
「今日は、こちらのケーキをください」
「お母さん、オレはこれがいい!」
「はいはい」

 数点残っていたケーキは、二人に購入されて、今日も完売となった。
 
「ありがとうございました!」

 男の子たちが帰っていくと、圭ちゃんが厨房から顔を出した。

「やっぱり、師匠のケーキはすげぇな」
「圭ちゃん」

 どうやら、さっきの会話を聞いていたようだ。