お母さんが、ためらいがちに言った。
 ちなみに、お母さんはお店の方は手伝ってないんだけど、経理を任されている。
 
「圭ちゃん……? えっ、もうパジャマだよ!」

 今朝、パジャマのままはダメだって言われたばかりなのに。
 開けようかどうか迷っていると、扉の向こうから圭ちゃんの声が聞こえた。
 
「祥子、そのままでいいから聞いてくれ」

 ドアノブにかけた手をピタッと止めて、少しだけ真剣なその声に、耳を傾ける。
 
「誕生日おめでとう」

 あと30分ほどで日が変わってしまうのに。
 圭ちゃんは、ちゃんと覚えていてくれたんだ。
 
「さっき、言いそびれてごめん」

 閉店前に男の子が来てバタバタしてたからだろう。
 
「わざわざ、それを言いに?」
「いや、あと……ケーキ作ってきた」
「ケーキ!?」

 それを聞いて、私はパジャマであることも忘れて部屋の扉を勢いよく開けた。