ふいに、声をかけられて振り返る。ヴィルヘルムが、王太子であるアルブレヒトより王子のようなきらきらしい笑顔で歩み寄ってきた。

「きれいになったね、シャルロット。もちろんずうっと前から綺麗だったけれど、今はかわいいより、きれいという印象を受けるよ」
「まあ、お兄さまったら」
「久しいですね、ヴィルヘルム」
「王妃殿下。ご機嫌麗しく……」
「かしこまらないで。わたくし、シャルロットがいると、毎日が楽しいの。ヒュントヘン家には心から感謝をしています」
「ありがたく存じます」

 ヴィルヘルムは、胸に手をあて、整った所作で礼をする。ヴィルヘルムを慕う令嬢らの黄色い声が聞こえた。

「ヴィル、お前、お……僕がいない間にシャロにちょっかいをかけるんじゃない」
「殿下、愛しい妹に会うななどと、ひどいことをおっしゃらないでください。久々のシャルロット成分、摂取せねば干からびて死んでしまいます。僕は今か今かと待っている家族のもとへ、妹を連れ出したく参っただけです」
「な……」
「お兄さま!お父さまたちが来ていらっしゃるの?」
「ああ、そうだよ。今日はアレクシアとクリスティーネも一緒だ」
「まあ!」