シャルロットは、その気迫に負けてはい、と答えたのだけれど、もしかして、あれはシャルロットをおいしくするための、何かそういうおまじないだったりするのだろうか。

「アルブレヒト、あなた、シャルロットがつかれているでしょう。飲み物すら運べない男には育てていませんよ」
「母上。ああ、たしかに。シャロ、少し待っていて」

 王妃が歩み寄る。それほど仲がよいところを見なかった王妃とアルブレヒト。そのふたりがこんなにも近しく会話しているのを見て、貴族らはそろって目を丸くした。
 シャルロットを介して、王妃とアルブレヒトが歩み寄ったのだろう、ほっとするように笑うのは、古くから国に仕える老貴族だ。

 王妃とシャルロットが並んでいると、アルブレヒトがいるより親しみやすいのか、挨拶に来るものが増える。
 それに笑顔で応じていると、シャルロットの前に、シャルロットよりくすんだ銀髪をした令嬢が、親に連れられて歩み寄ってきた。

「ごきげんよう、フント伯爵。最近、気候がすぐれないようですが、領民は大丈夫かしら」

 王妃がにこやかに伯爵を呼ぶ。フント伯爵は、最近よい噂をあまり聞かない人間だ。
 シャルロットのうわさを吹聴していた一人であり、だからこそ、王妃は釘を刺したのだろう。
 シャルロットに何か用か、と。
 そういえば、連れられている令嬢には見覚えがあった。いつのまにかお茶会に来なくなった令嬢だ。
 シャルロットが自分も声をかけようと口を開く、が彼女はそれより早く、あなどるような目をしてシャルロットを見た。

「ごきげんよう、シャルロット様、先日の、マルティナ様を懲らしめるその手腕、見事でしたわ。シャルロット様にあのような……ごめんあそばせ、殿方につかみかかるような面があるとは、存じ上げませんでした」