風のうわさで、シャルロットが王太子アルブレヒトの婚約者に選ばれたと聞いた。
頭の冷えていたマルティナは、それをうれしく思ったものだ。
マルティナの妖精は、さすがだ!仲良くなりたいという思いがもう一度膨らんで、それから2年間、マルティナは努力した。
朝から走り込みをする父と兄に頼み込んで、マルティナも鍛えた。
シャルロットが歌の名手だと聞いてからは、それまで得意ではなかった歌の勉強にも力を入れた。歴史の勉強だって、マナーの練習だって頑張ったし、マルティナに釣り合うようになりたくて、おしゃれの研究にも力をいれた。
不器用なマルティナは、朝も夜も、ひたすらに練習した。それでも、少しマシになったくらいの腕前しか得られない。だからもっともっと練習せねばならなかった。
「お前は、シャルロット嬢が本当に好きだね」
「当たり前よ、兄さま。シャルロット様は、本当にすごいんだから」
マルティナと仲の良くない兄をしてそう言わしめるほど、あの頃のマルティナは、頭に思い描いた理想のシャルロットに夢中だった。