同年代の少女の平均よりずいぶん小柄なシャルロットの体は、同じく小柄な母の腕でも簡単に支えられてしまう。
そのせいで、父も兄も心配なのかしら、とシャルロットは思っていた。

「シャルロット、明日は誕生日のパーティーですからね。世界一かわいいあなたをお披露目できるのが、わたくしはとても誇らしいわ。今日はけがをしないように、母が抱いていてあげますからね」
「母上だって過保護ではないですか!」

 実際は、歳をとって生まれた末の娘、妹を溺愛する家族の愛が大きすぎるだけなのだが、シャルロットはそんなことには気づかなかった。
 ただただ、家族のことを大好きだと思っていた。そればかりだった。

 ──だけど、そう思うたび、幸せだと思うたび、このままでいてはいけないような予感がして、シャルロットは不安になる。

 いつも、こういうときにシャルロットの脳裏によぎる面差しがあるから。
 シャルロットにはもうひとり、大切な人がいる。いいや、いたはずなのだ。そう思ってしまう。

 シャルロットの目の前で、シャルロットをシャロと呼び、涙を流して抱きしめる、黒い髪と青い目の少年──彼のことを、シャルロットはとても好きだと思っていた。