シャルロット・シャロ・ヒュントヘンは、マルティナ・ティーゼのあこがれだった。
初めて出会ったのは、マルティナが5歳になってずいぶん経った頃だ。春に産まれたシャルロットは、誕生日のお祝い事もずいぶん華やかで、冬の初め、木々の紅葉すら落ち切ったころに開かれる誕生日パーティーとは大違いだった。
マルティナだって、春に産まれていればこのくらいに素晴らしい誕生日パーティーだったはずだ。悔しくて憎まれ口をたたいたマルティナを、騎士団長をしている父は優しくたしなめた。
それでも……それでも、実際のシャルロットを見たとき、マルティナの天狗だった鼻っ柱は簡単におられた。そのくらいに、シャルロットはマルティナのこうありたいという理想そのものだったのだ。
可憐な笑顔、ちょこちょことした動き。小柄な背丈で愛らしい、マルティナは、シャルロットと仲良くなりたかった。
──けれど、マルティナの美しい妖精は残酷で、それすら許してなどくれなかった。
シャルロットは、アルブレヒトに駆け寄った時、まるでマルティナを視界にいれなかった。
一瞬たりともマルティナが映らない目に失望して──いいや、そんな大人っぽいものじゃない。
言ってしまえばマルティナはふてくされていたのだ。
マルティナは、結局シャルロットにあいさつすることなくヒュントヘン公爵家を後にした。