シャルロットは、思い出す。未来の国母だからと、にこやかにシャルロットに追従し、陰で悪い噂に相槌を打つ令嬢たち。その中に、マルティナの姿はなかった。
彼女はいつだって真っ向からシャルロットに立ち向かってきた。
苛烈で、激しくて、誰よりもシャルロットを傷つけたマルティナ・ティーゼ。
彼女はシャルロットに対していつだって非道だった。シャルロットを嫌いだと、隠さずに、真正面からシャルロットを攻撃した。
それは──それは、シャルロットに対して、心から誠実だったと……。そういうことではないだろうか。
マルティナがひきつれ、なおくぐもった悲鳴を上げる。青紫色の手の先は、このままだと砕けるか、壊死してしまうだろう。
もう、考える暇はなかった。
シャルロットは、目前でマルティナの手を握りつぶさんとするアルブレヒトの手をつかんだ。