「わたくしよりなんでもできるのに、なんでも持っているのに、持ってないみたいな顔……!殿下の心も、信頼も!地位も!美貌も!……知識も器量だって、なにひとつわたくしより下のものがないくせに!」

 アルブレヒトの手が、マルティナの腕に力を籠める。それでも──それでもマルティナは、言葉を抑えることはなかった。

「いじわるされても、悪口を言われても!どうして言い返さないの!誰にも言わずに、そうされるのが当然みたいに……!それはわたくしに対する侮辱だわ!あなたは高慢よ!シャルロット・シャロ・ヒュントヘン!」

 支離滅裂だと、誰かが言った。
 湖に落とした石ころが作り出す波にも似たさざめきだ。だけど、ここには岸がない。どこまでも広がる悪意の波紋は、そのまま収束してマルティナに返っていく。
 だが、マルティナは何度でもシャルロットを嫌いだといった。