自慢げに指を広げた手のひらを父に見せる、そんなこの世の愛らしさを一身に詰め込んだ愛娘を、父であるヒュントヘン公爵は目じりを下げて見つめた。
「知っているとも、愛しいシャルロット。もう数が数えられるようになったんだね」
「お勉強を頑張っていますもの!……きゃん!」
えっへん、と胸を張り、大好きな父を見上げた少女──シャルロット・シャロ・ヒュントヘンは、勢いが良すぎたのか、小さな体を後ろに転がしそうになった。
「シャル、危ないよ。お前が怪我をしたら、僕は死んでしまう」
そう言ってシャルロットを抱きとめたのは、歳の離れた長兄のヴィルヘルム・ヴィオラ・ヒュントヘン。花の名前をミドルネームに持つ彼は、今は隣国の学園に通っている双子の姉たちと並んでも違和感のないほど美しい、中性的な顔だちをしている。
兄とよく似た面差しの美しい姉たちとは、家族は明日のためにと手紙のやり取りはしてきたらしいが、シャルロット本人はここ何か月か会えていなかった。明日の誕生日パーティーに合わせて帰ってくると聞いた時、シャルロットはとてもうれしかったのを覚えている。
「そうだよ、シャルロット」
「あなた、過保護がすぎますよ」
ヴィルヘルムの言葉に同意した父の言葉をさえぎって、兄の手からシャルロットをすいと奪って抱き上げたのは公爵夫人である母だ。