「──シャルロット・シャロ・ヒュントヘン。彼女が私の婚約者だ」

 翌日のシャルロットは、輝かんばかりに美しい王太子の婚約者として、王家主催の婚約披露パーティーに君臨した。
 ファーストダンスをアルブレヒトと踊り、セカンドダンスも、その後も。

 踊り続け、シャルロットを解放しないアルブレヒトを、予想通り男たちの嫉妬の視線が突き刺したが、それだけで、人々は、この、王太子の寵愛深い姫君こそ、庶子と言われたはずのシャルロット・シャロ・ヒュントヘンなのだと理解しただろう。

 シャルロットが、日陰の存在であるはずがない。

「シャルロットをよろしくおねがいするわ、わたくしの大切な未来の娘なの」
「お義母さま……ありがとうございます」

 アルブレヒトの母王妃は、ここぞとばかりにシャルロットを溺愛してみせた。
 朗らかに笑う王妃に、並み居る貴族の当主は驚いた。

 鬱々と閉じこもっては、ふいに貼り付けた仮面の笑みで夜会に現れる王妃が、堂々と主催の一人として振舞っている。
それがシャルロットによってもたらされたものだと理解した者は、確実にいた。