「僕も、シャロのことを愛しているよ」
愛しているから、だから──……いいや、苦しめるとわかっても。この腕から離したくないと思ってしまう。
ヒュントヘン公爵家から、シャルロットを案じる手紙は幾度も届いていたが、その手紙には、シャルロットを公爵家に帰すようにとは一度も書かれていなかった。
アルブレヒトを信頼しているのか。こんな自分を。
この間会ったヒュントヘン公爵は、アルブレヒトに好意的だった。
それでも、今のシャルロットを考えると、ヴィルヘルムが抑えていると言った方がずいぶん真実味があった。
アルブレヒトの腕で、安心したように目を閉じるシャルロットを見下ろす。
──どうして、君はそんなにやさしいのだろう。
アルブレヒトは、シャルロットがアルブレヒトに心配をかけぬように何も言わないのだと気付いていた。
アルブレヒトには頼れないのかと傷ついたことだってある。
それでも、その一生懸命な姿が、かつてアルブレヒトが心の拠り所にしたシャルと同じで。だからアルブレヒトは、シャルロットに問いただそうとするのをやめたのだ。
──かわりに。
かわりに、シャルロットにばれないように、令嬢たちの実家に圧力をかけることにした。
貴族なんて、だれもかれも探られて痛い腹の1つや2つ持っているものだ。
アルブレヒトは、王の代わりに出ている議会の場で、ちらりとそれをほのめかした。
必死に取り繕うもの、賄賂を送ろうとするもの──。そうやって尻尾を出したところに処罰を与えた。