令嬢たちの顔を──マルティナの顔を見ることはなかった。
 侍女たちが、マルティナを囲んで守るように連れ帰る。後ろから、クスクスとひそやかな笑い声がして、シャルロットはぽとりと、耐えきることのできなかった、ひとしずくの涙をこぼした。

「今の、見た?」
「ええ、子犬姫なんて呼ばれているけれど、あれじゃあ負け犬姫ね」
「あら、お上手。それにしても、マルティナ様、お見事ですわ」
「さすがマルティナ様ね」

 令嬢たちの声が聞こえなくなる。マルティナは、なんと返事をしたのだろうか。マルティナの視線がシャルロットをまだ追っている気がして、シャルロットは噛み締めた唇を震わせた。

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