「ああ、ごめんなさいね。わたくし……」

 しゅんとうなだれた王妃は、アルブレヒトを産んだとは思えないほど若々しかった。
 外見もだが──中身が。
 シャルロットは、その理由をすぐに知ることになる。

 王妃の待っていた部屋は、王妃の趣味のものを集めた部屋だとは聞いていた。
 兎に猫のぬいぐるみや、花をかたどったクッション。

 その上に、シャルロットより少し小さいくらいの人形が、いくつもいくつも飾られている。大きなものはシャルロットと同じくらいの背丈だったから、シャルロットが黙ってここに座って居れば、何人かはシャルロットを人形だと思うのではないだろうか。

「さあ、お話ししましょう。ああ、お勉強もよね。まずはアインヴォルフの貴族のお顔とお名前を覚えましょうか」
そう言って、シャルロットを抱えて自身の膝の上に乗せた王妃は、鼻歌をうたいながら、侍女を手招いた。

「さ、ここに載っているひとたちをみんな覚えなくてはいけないから、がんばりましょうね」
「はい、王妃さま」
「もう!お義母さまと呼んでほしいわ。わたくし、今とてもうれしいのよ」
「ええと、はい、お義母さま」
「かわいい……っ!」