ふんわりと。シャルの鼻腔がくすぐられる。ぱちぱちとしばたたいた目が映したのは、アルブレヒトとよく似た匂いの女性──豪奢な金髪を優雅なシニヨンにまとめ上げ、涼し気な水色のドレスを身にまとっている、目は、アルブレヒトと同じ、深い深い青色をしていた。

「おうひ、でんか?」

 舌足らずな声が出てしまった。はずかしくて口を覆うと、王妃の手がまたシャルロットを抱え上げた。むぐ、とシャルロットの顔が、再び王妃の豊かな胸に埋まる。
 どうしたらいいのかしら。アルブレヒトに迷惑をかけたくないのでじたばたするわけにもいかなくて、息ができる隙間を確保したシャルロットは、おびえた子犬のように固まっていた。

「なんてかわいらしいの!シャルロット、あなたがわたくしの娘になるなんて、偉大なる建国王にも感謝すべき幸福だわ!」
「……王妃殿下は、愛らしいものがその……とてもとても……好きでして……」

 そう言ったのは、王妃の背後に控えている女官だ。顔を覆ってまさかこんなに……とぶつぶつつぶやいている。