ぷりぷりとアルブレヒトをしかりつけるアンナは、アルブレヒトの乳母だった、らしい。
 そういえば、ずいぶん昔にアンナとよく似た女性が、シャルロットのために苺を刻んでくれたのを覚えている。彼女がアンナだったのだろうか。

「さあさ、レディの着替えを見るものではありませんよ!出て行ってくださいな!」
「アルブレヒトさま、」

 なんだかかわいそうになって、シャルロットがアルブレヒトの名前を呼ぶ。
 アルブレヒトは、アンナに逆らわずに部屋を出たけれど、最後に振り返って、「かわいいね」と口の動きで残していった。
 ぽふんと頬を赤くしたシャルロットに、アンナは愛しいものを見るような眼差しを向けた。

「本当に、おひいさまは私たちのおひいさまですねえ」
「ええ、ええ!お優しくて愛らしくて……殿下が溺愛なさるのもわかります!」
「それだけでは、ないのだけれど」

 アンナはシャルロットの頬に、触れる。皴の目立つ顔が、シャルロットの前に降りてきた。

「本当に、本当に、おひいさまがきてくださってよかった」

 アンナが目を細める。安心したような、そんな表情だった。

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