「ど、どうしたの?」
「おひいさま、ご心配なさらず。あの者たちはおひいさまがあんまりにも、そう!あんまりにも!愛らしすぎて失神してしまっただけなのです」
「で、でも……体調が悪いのかもしれないわ、大丈夫かしら」
「おやさしいおひいさま、その一言だけで、あの者たちは向こう3年は俸禄をいただかなくても飢えることはないでしょう」

 興奮したクロエの言っていることはよくわからない。アガーテに視線を向けると、彼女は彼女でちぎれんばかりに首を上下させている。
 シャルロットが困惑していると、ぱんぱん!と手をたたく音がした。

「皆さん、いい加減になさい。今日はおひいさまがはじめて王妃様にお会いになるのです。おひいさまの準備をきちんとなさい。進んでいないじゃないですか」

 アンナだ。次いで、恰幅の良いアンナの後ろから、シャルロットがこの世で一番美しいと思う黒色があらわれた。

「シャロは、なにを着ていてもかわいいけれど……」
「アルブレヒト殿下、5歳でも女は女なのです。飾り立てずにどうします!そもそも、私どもにおひいさまを前にして着飾らせないという拷問を強いるなんて、このアンナが許しませんよ!」