「万が一、それでもなにか言われたら、このクロエがこてんぱんにのしてやりますからね。子犬姫様!」

 シャルロットを子犬姫と呼び、ほとんど崇拝しているクロエが締めくくった。
シャルロットには、いつも彼女らがなにを言っているのか、よくわからない。勉強する内容を増やしてもらおうかしらと思って、この日も世話を受けた。

 背中まで降ろされたやわらかな髪に、いくつかのこげ茶が映える。シャルロットのこの産まれつきの独特な毛色を、この三人を含めた大勢の侍女たちは称賛する。
 それにはにかみながら、シャルロットは二つに結ってたらした髪のむすび目に真珠の髪飾りをのせられているのに気付いて、あれ、と思った。

「今日は、いつもよりきらきらがいっぱいなのね」

 寝起きで舌足らず、そして子供特有の語彙が、シャルロットの玲瓏な容姿から飛び出したのに、髪飾りも持つクロエはしばし硬直し、こまごまと宝飾品の準備をしていた侍女は数人倒れこんだ。