それはシャルロットに、シャロに対する不誠実だ。と、遠回しになじる文面の後には、もはや見慣れすぎて定型文のようにすら思える、貴族の娘らの紹介文──簡潔に言って、婚約を見直せという文言が書いてあった。

 くっとせせら笑う──ような顔を作る。
 シャルロットが自分のことで苦しんでいるのがうれしい──彼女には笑っていてほしい。
 シャルロットの涙のあとが痛々しい──それがアルブレヒトへの想いからだとわかっているから、胸がぎゅうと締め付けられた。

 相反する感情を持て余す。
 シャルロットのことに関して、アルブレヒトは自分の感情をコントロールするすべを持たなかった。
 ──ふいに、シャルロットの睫毛が揺れた。アルブレヒトは、そのまぶたが開くのを凝視した。

 エメラルドグリーンの、深い虹彩、ゆっくりと、ゆるゆると、現れる、宝石のようなシャルロットの瞳は、生命に満ちて輝いている。
 知らず、詰めた息を吐いていた。

「アルブレヒトさま……?」