アルブレヒトは、シャルロットの頬に手を添える。温めようとしたのに、アルブレヒトの手のひらのほうが冷たかった。これじゃあだめだと手を離すと、シャルロットの白皙の頬に、赤いべったりしたものがこびりついているのが視界に入る。

 喉が鳴る。胃からせりあがるものを無理やり押さえつけ、アルブレヒトはぐっと手を握った。
 ──大丈夫だ、シャロは生きている。
 シャロは、シャルロットは生きている。アルブレヒトは、犬のシャルと人のシャルロットを区別するつもりなど毛頭ない。どちらもアルブレヒトの唯一で、同じ存在だ。
 は、と息をする。呼吸が苦しかった。

 ふいに、カーテンが揺れた。生まれ変わりを信じると言った狸が提出してきた書類。それが、開け放した窓から入ってきた風にひらめき、アルブレヒトの足元に落ちた。

 ──シャルロット嬢と、愛犬殿を同一視してはなりません。