その瞬間、がさがさと庭木が揺れて、長い毛に草を絡め、葉っぱだらけのシー・ズー犬が飛び出してきた。

「シャロ!もう……せっかく隠れていたのに」
「シャロ様のほうがアルよりずっと賢いな。なにせ今日は出てこないと父上のお小言のおまけがついてくる予定だった」
「お前は鬼畜か何かか?」
「無害な子犬一族の長男だ」

 軽口をたたくヴィルヘルムは、アルブレヒトには気楽な態度をとるが、このアルブレヒトの愛犬たるシャロには丁寧な態度を心掛けていた。

 それは、アルブレヒトの命令でもあったし、ヴィルヘルム自身、このシャロをかわいく思っていたからでもあった。賢く、いうことをきちんと聞く。